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<自民新憲法>戦争放棄の条文維持、自衛軍の保持明記 [ 10月28日 21時54分 ] 自民党は28日、新憲法起草委員会(森喜朗委員長)などを開き、結党50年に向け策定を進めていた新憲法草案を決定した。改憲論議の「たたき台」とすることを狙ったもの。焦点の9条は戦争放棄を定めた1項の条文を維持する一方で、戦力不保持を定めた現行の2項を全面改定。自衛軍の保持を明記し、現行憲法が禁じる集団的自衛権の行使を事実上容認した。全体の理念を示す前文は自主憲法との位置づけや国民が国を「自ら支え守る責務」も盛り込んだが、中曽根康弘元首相がまとめた保守色の強い素案の内容を大幅に変更。伝統文化などに関する復古的な表現は盛らず民主、公明党への配慮を優先した。条文形式の改憲草案を同党が決定したのは初。草案は現憲法に対応する99条で構成。森氏らが小泉純一郎首相と28日会談し、前文や9条部分について最終決断した。その後の起草委では異論が相次いだが森氏が押し切り、党政審、総務会で決定した。
最後まで調整が続いた前文は、小委員長の中曽根元首相が7日に示した素案を「情緒的だ」として変更。愛国心や国防については「国を愛する国民の努力によって国の独立を守る」から、「国や社会を愛情と責任感と気概をもって自ら支え守る責務を共有」に表現を薄めた。また日本の伝統文化や明治憲法の歴史的意義などに関する記述を削除。象徴天皇制の維持や環境保護を掲げた。
最大の焦点の9条では8月の1次案段階で改定を検討した1項は現行憲法の条文をそのまま維持した。戦力不保持と交戦権の否認を定めた現行の2項は全面改定。自衛軍を明記し、「我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全を確保するため」との目的をうたって、集団的自衛権の行使を解釈上で容認した。また「国際社会の平和と安全を確保するために国際的に協調して行われる活動」として、国際協力への参加を規定。海外での武力行使を事実上認めた。ただ、いずれも具体的内容は新たに制定する基本法に先送りした。
また、国民に「自由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚」するよう求め、国が行政を説明する責務やプライバシー権、環境権などの新たな権利を盛り込んだ。
さらに国や自治体の宗教活動について政教分離原則を緩和、首相の靖国神社参拝や玉ぐし料支出を念頭に一定の宗教活動を容認した。改憲の発議要件は現行の「衆参両院の総議員の3分の2以上の賛成」を「過半数の賛成」に緩和した。【松尾良】
▼自民党新憲法草案のポイント
・前文で自主憲法制定、象徴天皇制の維持、「国や社会を愛情をもって支え守る責務」を明記
・現行憲法9条の戦争放棄の条文を維持
・「自衛軍」の保持を明記し、集団的自衛権の行使や国際協力で武力行使を容認
・国の説明責任やプライバシー権、環境権などの新しい権利を創設
・政教分離原則を緩和し、国や自治体に社会的儀礼の範囲内の宗教活動を容認
・首相権限を強化し、自衛軍の指揮権、衆院の解散権、行政各部の総合調整権を明記
・改正の要件を衆参各院の3分の2以上の賛成から過半数に緩和
・国民の新たな義務の盛り込みは見送り
◇与野党で複雑な反応
自民党が28日決定した新憲法草案について、与野党は複雑な反応を示した。草案をまとめた自民党内では内容への評価が二分。野党は民主党が「自己満足」と突き放したほか、9条改憲などを総じて厳しく批判した。
党新憲法起草委員会で前文小委員会の委員長を務めた中曽根康弘元首相は記者団に「努力のあとはうかがえるが、部分的にまだ十分でない。歴史や文化や伝統という国柄、我々の子孫に伝えていくべき考え方は完全に抜けている」と不満を示した。また、宮沢喜一元首相(天皇小委員長)は「予想したよりはるかに穏やかなものができた」と評価。「自衛軍の保持」については「事実そのままの表現ではないか」と指摘しつつ「詰め切れずに問題をあとに残した。どういうことを意味するかはさらに議論する必要がある」と述べた。
一方、民主党の枝野幸男憲法調査会長は「早い時期に憲法改正を発議しようと思えば、(与野党の)合意形成に努力しなければむしろ物事は遅れる。独自色を発揮しようとしてもほとんど意味がなく(自民党案は)自己満足の世界だ」と突き放した。「自衛軍」については「自衛権の行使をどういうルールで行うかについての合意形成が先だ」と語った。
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