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2011年3月に起きた東日本大震災から、53ヶ月。
あの日から、4年と5ヶ月が過ぎました。
震災への精神的な支援を目的に(株)小学館様の特別の許可を頂き、無償で公開させていただく「いいひと。+…and I still remember.〜これから。」の第49期の限定ダウンロードを本日、震災が起こった同時刻の14時46分18秒に、開始させて頂きます。
まだあの日から4年と半分しか経っていませんが、まさに今日原発の再稼動のニュースが各メディアで報じられています。「万が一事故が起きた場合は国が先頭に立ち、迅速な対応などが円滑に行われるよう責任を持って対処する」そうですが、あの日、「万が一」は「起こってはならないこと」だったんだ。「多くのかけがえのない命と生活と引き換えのもの」だったんだと、気づかされ、気付いたはずだったのですが。そうした選択が、私たちが選挙で選んだ方々により作られた、現政府によって行われたことの意味を、私も、たくさんのひとも一人一人がそれぞれの立場で、他のそれぞれの立場の人を思いやって、考えなくてはいけない事と、心新たにする思いです。善でも悪でもなく、たくさんの人の事情が絡まり、答えを導き出せない問題ではありますが、「考え続けることが出来る。だから人間なんだ」私の作品「きみのカケラ」のクライマックスに主人公イコロに言わせたこの言葉は、私の中ではまだ生きています。
被災された方、直接被災されなくても心が傷ついた方、原発の元で被害を受けつづけていらっしゃる方、仮設や避難先での生活を続けていらっしゃる方、そしてこの作品を描かせていただくきっかけになった阪神淡路大震災を始め多くの災害で傷ついた、今なお終わらない痛みと悲しみにお見舞い申し上げます。
震災から4年以上、未だ一度もこの作品のPDFファイルをバージョンアップさせる事は出来ていません。生活して社会の中で生きて行く事と、小さな漫画家によるこんな小さな物でさえも両立させて行く事の難しさや、自分に対してのふがいなさを改めて確認するような日々です。
被災された方にかけられるような言葉はまだ無いけれど、忘れないために、わたしの読者の方々にかけられる言葉はあると信じて、公開を続けさせて頂ければと思っています。
ごく小さな作品ですが、この漫画を描くために積み重ねた自分なりに熱い日々や、このように無償公開するために費やした日々は、わたしにとっての小さな「あの日の」真実です。
あの日、阪神・淡路の震災で被災された方に取材させていただいた「忘れ去られる事が一番つらい」という趣旨の言葉から始まったこの作品を、改めて今後も、私自身への反省や気付きも併せまして、作品のテーマ同様、震災からの節目節目で「思い出すこと」をテーマに公開して行けたらと思い、続けさせていただきます。
震災直後の2011年3月26日の第1期の公開以来、たくさんのダウンロード、リツイート、ご感想、そして何より、読んでいただきましてありがとうございます。
いつもは作品を出版関係の方や本屋さんから読者さんの元に届けて頂くのですが、この作品はツイッターやwebを通じて、作品を「読者さんから」、そのお友達の方々に届けて頂いています。お手数をおかけしますが、作家としてとても幸せな事だとも思っています。
小さな漫画家の小さな作品に、皆さんで多くの力を与えてくださったこと。その事で、読まれた方の中で少しでも、前を向けた方がいらっしゃれば、嬉しく、誇りに思います。
漫画を取り巻く環境が必ずしも良い方向には進んでいない時ですが、漫画家の先輩達が血のにじむ思いをして開いて下さった「こんな時にでも誰かに勇気をわける事が出来る、信じる」という、漫画が持ち得る道を途絶えさせぬよう、私の小さな一歩一歩を、重ねさせて頂ければと思います。
では、この作品を、今は私の読者の方に。それと、もし漫画が好きなお友達で、日常の中震災の事が忘れられて行く、忘れて行く事に心が傷ついている方がいらっしゃいましたら、よろしければまわして頂けますか?小さな力の漫画家で申し訳ないのですが。
2015年8月11日 高橋しん
<画像:IIHITO-eq-hyoushi.jpg>無償ダウンロードはこちらの第1期配信のエントリーからどうぞ。
※今期の無償配信は、本日から3日間の限定配信を考えています。
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